厳美渓は、栗駒山を水源とする磐井川が巨岩を浸食して形成された、全長約2kmの渓谷です。春は満開の桜を眺め、夏は新緑と清流のせせらぎを聞き、秋は色とりどりに染まる紅葉、冬には水墨画を思わせる雪景色が広がります。季節とともに変化する厳美渓の美しさは、仙台藩主・伊達政宗が「松島と厳美が我が領土の二大景勝地なり」と、賛美の言葉を残したと伝わるほど。1927年に国の史跡名勝天然記念物に指定され、岩手・一関エリアを代表する人気の観光スポットとして多くの人が訪れます。
上流には奇岩・巨岩などの迫力の景観が、下流には深淵などの穏やかな風景が広がっており、「静」と「動」の渓谷美が楽しめる厳美渓。中でも、地質学的に貴重な「甌穴(おうけつ)」が多く見られることも特徴です。甌穴とは、小石などが水流に乗ってクルクルと回転し、川底の岩盤を少しずつ削ってできた丸い穴。直径1mを超えるものも多く、何百万年という長い時間をかけて大自然が生み出した珍しい現象をいくつも目にすることができます。また、厳美渓の名物といえば、「郭公(かっこう)だんご」も人気。東屋にある籠にお金を入れて木槌を叩くと、対岸にある店舗からリフトに乗ってお団子が飛んでくる、「空飛ぶだんご」としても知られています(冬季休業)。美しい渓谷を眺めながら、お茶とお団子で一息つくのもおすすめです。